所信
公益社団法人天童青年会議所
2023年度理事長 佐野 峻也
“僕のした単純作業がこの世界を回り回って、まだ出会ったこともない人の笑い声を作ってゆく”
何かに躓いたとき、自分を見つめ直すとき、私が決まって自分の心に言い聞かせる、ある曲の1フレーズです。どんなに小さな作業でも、そのときはちっぽけに感じてしまう仕事でも、使命感やプライドを持ってさえいれば、きっとそれは巡り巡って周囲の気持ちを動かし、誰かの笑顔や笑い声を作ってゆく。⻘年会議所における運動や事業にも、この歌詞を重ねます。その時は辛く感じるようなことも、事業や例会が終わったあと、或いは時間がしばらく経ったあと、一緒に苦楽を共にした仲間だけではなく、思いもしない人の笑顔を作っていたことに気付かされる。私は幸いにも、そんなかけがえのない経験を、⻘年会議所の中で得てきました。それは40歳までの限られた時間を、当事者意識を持った仲間と共に過ごす⻘年会議所でしか出会えない、味わえない稀有な経験だと感じます。この笑顔を創出する成功体験があるからこそ、まちに必要とされる組織として今日まで歩みを進め、半世紀を超える天童⻘年会議所の歴史が紡がれてきたのだと思います。本年も笑顔の連鎖につながるよう邁進し、明るい豊かな社会の実現へ向けてまた一歩、未来へ力強い足音を踏み鳴らします。
継往開来〜まちのたからの歩みを前へ〜
全国中学生選抜将棋選手権大会は、今や中学生棋士における将棋の三大大会の一つとして認知され、本年度で第44回目を迎えることとなります。私は2017年に将棋のまち創造委員会委員⻑として第38回全国中学生選抜将棋選手権大会を経験させていただきましたが、先輩や力強い委員会メンバーのサポートのおかげで大会を無事に終了することができました。信頼できる仲間とだからこそ開催できる大会です。
今年も大会の三つの理念である「⻘少年の健全育成」「将棋人口の拡大」「地場産業の発展」を引き継ぎ、伝統と格式ある本大会の意義を共有し合い、歴史を紡ぐだけではなく持続可能な大会へと進化した大会運営を目指します。将棋は天童のたからです。そして、礼節と棋力を尽くして挑戦する中学生棋士は将棋界のたからです。年間を通して今大会や将棋に関わる各諸団体との関係性を高め、天童のたからの価値の向上を目指すと共に、全国から集う将棋界のたからの笑顔が咲き誇る棋士ファーストの大会を運営してまいります。
子どもたちへバトンを
私は2014年に入会してから今日まで、天童⻘年会議所が展開する天童の未来を担う子ど公益社団法人天童⻘年会議所第54代理事⻑佐野峻也
もたちの健全育成を目的とした事業や、天童の魅力を市内外に発信することを目的とした事業を幾つも体験してきました。子どもたちの成⻑や、地域の魅力向上を真剣に考え、事業が構築され、その事業が成された後の子どもたちや地域の人々の笑顔は、何にも変え難く、私たちの存在意義であるとも感じました。新型コロナウイルス感染症は、その存在意義まで脅かし、私たちの根幹とも言える成⻑の機会だけではなく、人々の笑顔を創出する機会までも消し去ろうとするほどの影響を残しています。
私たちはもう一度、地域の優しい目線で子どもたちの未来を考え、このまちに住まう人々の笑顔を取り戻す必要があります。子どもからお年寄りまで笑い声に溢れ、輝くまちにしなければなりません。私たちの創る未来を生きていくのは、次世代の子どもたちです。そして、その子どもたちが次代をさらに良き時代として引き継いでいきます。子どもたちの未来を明るく照らし、地域の方々と愛郷心を持って共にその成⻑を見守り、バトンを渡していきます。
輝きを放つ組織へ
2022年度は12名の新入会員を迎え、多くの仲間が増えました。しかしながら、これからの3年以内に現会員数の三分の一以上が卒業を迎えます。健全な組織運営、組織の存続を考えれば、会員拡大は引き続き急務と言えます。
会員を拡大すること自体が⻘年会議所運動の目的ではありません。会員個人が輝きを放ち、組織としても魅力的であれば自ずと入会希望者は増えていくと考えます。そして、家族や会社、周囲の人々から私たちの運動が理解されれば、地域から必要とされる個人、組織として認知されていきます。
私たちは、⻘年経済人である前に、一市⺠です。周囲からどう見られているか、何を期待されているか、しっかりと見極め、礼儀礼節を重んじた⻘年の模範として行動していかなければなりません。周囲の人へ素直に感謝する心を持ち、人としての魅力を磨き、輝きを放った個人が集い、ビジョンを共有し、互いを尊重しながら響き合い、市⺠の心を動かす組織へと進化していきます。
感度とアンテナ高い発信を
通信技術の発展は情報化社会の高速化をもたらし、SNSの隆盛は個人のニーズの細分化を日々深堀りしています。私たちは必要な情報を今や的確に、「秒」で、手に入れることができます。
私たちが展開する事業もその高速化に合わせ、スピーディーに発信しなければ、私たちの持つ情報を効率的に対外へ届けることはできません。スムーズな情報伝達が行われなければ私たちが展開する運動や事業の価値も下げてしまう可能性もあります。また、受信する情報も、戦略的に掴み取らなければ組織的な情報のアップデートができません。時代の変化に合わせ、改めて情報伝達の手段やSNS等での発信方法を見直し、対内外で活発なコミュニケーションを促す環境を整え、運動の推進力を高めてまいります。
One Team
天童⻘年会議所は、一つのチームです。同じビジョンを共有し、目的を達成するため、ともに汗を流します。そのチームの中に、委員会という小さなチームが複数存在します。そのチームを一つにまとめるため、個々を結ぶ事務局も必要不可欠です。内外の情報を共有し、組織にとって会員一人ひとりにとって必要な情報を循環させ、小回りを利かせフレキシブルに対応するチーム運営が必要です。
そして⻘年会議所は、関係諸団体と連携して様々な事業を展開しています。豪雨災害や地震などの天災は、いつどこで起こるか分かりません。もしもの災害が起こった際の先導役は事務局です。万が一に備え地域の困難を乗り越えるための関係各所と普段から連携しチームとして活動することが重要です。また、山形ブロック協議会や他のLOMとの連携は、天童⻘年会議所が展開する運動の価値を高め、相乗効果をもたらしてくれます。LOM内外との橋渡し役として天童⻘年会議所をOne Teamにまとめ、外部との連携強化によるシナジー効果を求めていきます。
運命的な出会いを
私が⻘年会議所に入会した動機の一つは、人との出会いです。年齢や業種が異なる多くの出会いの中で、刺激を受け、どの出会いも無駄ではなかったと思えたからです。天童⻘年会議所の中でも、信頼できる同期や頼りになる先輩、逞しい後輩に出会えたからこそ、今の自分が在ると心から思っております。多種多様な考えや価値観を持つ人との出会いは、自分を磨き、新たな自分との出会いにもつながります。良き出会いは、時に人生を変えてくれます。人生を豊かにしてくれます。
⻘年会議所には出向という絶好の出会いの機会があります。私も出向の機会を何度かいただき、多くの仲間と友情を育み、様々なことにチャレンジできた出会いは大切な財産です。活動する地域が違っても、共有している矜持は同じ仲間と出会い、新たな自分の道を切り開くチャンスに出会えます。自分に壁を作らず、多くの経験の中に自分を変える価値を見出して欲しいと願います。その持ち帰った個々の貴重な経験をLOMへ還元することで、組織に好循環にもたらし、LOMも組織として昇華していきます。
むすびに
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、私たち人類の日常は様変わりし、社会にまでその構造変化を求めるほど、その猛威による影響は大きなものとなりました。しかし、その大きな変化の中だからこそ、人々の「想い」に強く気づく時間でもありました。自分は一人で生きているのではなく、自分以外の人とつながって、想い合って生きているということを改めて教えてくれた期間でもありました。